匿名組合契約について

不動産特定共同事業は、一般的に投資家から資金を集めたのち、物件を取得し、運営し売却するというサイクルですが、投資家から募集している間に、売り主が別の第三者に土地・建物を売却しかねません。そこで、不特法の許可・登録が済んでいる場合、手出し資金でまず土地を購入する、足りなければ銀行から融資を受ける、または売り主に手付金を多めに払い仮契約をし仮登記をする、所有者からマスターリース契約を結ぶなど方法はいくつかありますが、まず自社の資金で土地を購入し、これを「劣後出資」と管理し、実際に所有権移転登記をします。建物があって、そのまま運営するのか、改修するのか、建替えをするのかいろいろありますが、そうした運営資金を募る、改修する資金を募る、建替え資金を募るなど様々に応用できます。そして集まったこの金額を「優先出資」として扱います。銀行からの融資は、出資ではありませんので別ものです。優先出資と言っても投資家保護の観点からリスクを表示し、クーリングオフの期間も定めた上での契約ですので、実務上、銀行からの融資は、優先出資より上位にあると言っても過言ではありません。

優先出資とは、利益を優先的に分配される権利で、出資金額以上の負担を負うことがない出資です。

劣後出資とは、損失があった場合、劣後出資者がまず負担をします。その負担額を超えて損失が出た場合、はじめて優先出資者が損失を負う形の出資です。

優先出資をする方は、登記に名前が載らないので匿名と呼び、責任も有限責任です。劣後出資者となる事業者は、優先出資者と1対1で契約を交わします。このスタイルを匿名組合契約型と言います。

各投資家が出資をし、不特法事業者と共同の事業を営むことを約することで成立し、現物出資の場合には登記に名前が載り、出資者は無限に責任を負い、共有化された不動産の所有権があるので節税対策にもなる契約スタイルを不動産特定共同事業法では、任意組合契約型と言います。

投資家の立場で見ると

不動産を所有したい場合や節税対策したい場合は「任意組合契約」を選ぶ

リスクを自己資金内に抑えて、面倒な手続きをしたくない場合で比較的、短期間での運用をしたい方は「匿名組合契約」を選ぶ

登録・許可の観点からは、どのような事業をしたいのかを念頭に匿名組合契約や任意後見契約のいずれかを選択し、約款を作成しますが、あらかじめ両方を選択するのも可能です。

任意組合契約における金銭出資と現物出資について

任意組合契約を行う場合、金銭出資と現物出資で約款も異なります。大きな違いは先の通りです。小規模不動産特定共同事業でも任意組合契約のスタイルは可能です。

現物出資と金銭出資の共通点

小規模不動産特定共同事業の場合、1号も2号(SPCがひとつだけの場合)も調達できる出資総額は1億円以下(施行令2条第1項第2号)とされています。この1億円の計算方法ですが、Aというプロジェクトに5000万円、Bというプロジェクトに5000万円の資金調達を投資家から集めた場合、どちらかのプロジェクトの出資金全額の返還をしなければ新しいCというプロジェクトに進むことができません。投資家の相続対策に極めて有効であり長期保有を前提とする任意組合契約のスタイルは、小規模不動産特定共同事業ではあまりなじまないと思います。匿名組合契約では、ブリッジスキーム(売却先が決まっているが、買付資金を早めに調達したいので投資家を募る方法)も有効です。